公演を観る

平成二十八年度 (公社)全国公立文化施設協会主催 「松竹大歌舞伎」市川 染五郎出演

実施概要

夏の風物詩、松竹大歌舞伎。

今年は人気と実力を兼ね備えた市川染五郎の座頭公演!

フレッシュな顔ぶれが揃う今年の夏歌舞伎は、魅力あふれる4つの演目です。

■ご挨拶

市川染五郎が素顔で登場し、各地の公演にご来場いただいた皆様にお目見得のご挨拶を申し上げます。客席と舞台が近しく感じられる一幕です。

■晒三番叟

  箱根権現では奉納された源氏の白旗が紛失し、騒ぎになっている。そこへ現れたのは、曽我二の宮(壱太郎)。周囲から怪しまれる二の宮は、奉納だと言って三番叟を踊り始める。実は、この二の宮は平忠度の娘如月姫。やがて、姫は源氏の白旗を使って布晒しを見せるのだった。

  本作は本外題を『今様四季三番三』といい宝暦五年(一七五五)に江戸市村座で初演されました。裾を引いた姫が三番叟を踊るという趣向が珍しく、『晒三番叟』の外題のとおり、躍動的な布晒しがみどころの舞踊です。

■松浦の太鼓

  雪が降る両国橋で、赤穂浪士の大高源吾(歌昇)は俳諧の宗匠宝井其角(橘三郎)と出会う。源吾は「明日待たるゝその宝船」と詠んで、その場を別れる。

  翌日、大名の松浦鎮信(染五郎)の屋敷では句会が行われている。源吾の妹お縫(高麗蔵)は松浦邸に腰元として仕えているが、松浦侯はお縫を見ると不機嫌になる。それと言うのも、松浦侯は赤穂浪士たちが隣家の吉良邸に討入しないことを不満に思っているからであった。だが、其角から源吾の下の句を聞いた松浦侯はその意味を考え始める。そこへ隣から陣太鼓の音が聞こえ、松浦侯は赤穂浪士の討入を悟るのだった。

  本作は明治三十三年(一九〇〇)に大阪朝日座で上演されました。『忠臣蔵』の外伝物のこの作品は、討入を心待ちにする松浦侯の喜怒哀楽を中心に、登場人物たちの心情が細やかに描かれた人気作です。

■粟餅

江戸の街中にやって来たのは、粟餅売りの杵造(染五郎)とおうす(壱太郎)。ふたりは早速、粟餅を作り始めると、名物の粟餅の曲投げを見せていく。やがて、ふたりは六歌仙の人々の様子を踊ったり、団扇太鼓を打ち鳴らしたりと賑やかな様子で、去っていくのだった。

本作は弘化二年(一八四五)に江戸中村屋で初演されました。当時、江戸で人気の粟餅売りの姿を舞踊化したこの作品は、粟餅の曲投げや曲取りを賑やかに見せるのが眼目です。息の合ったふたりによる軽妙な舞踊をお楽しみください。